Siril と GraXpert 天体画像処理の流れ ver.2

Siril

ここには、Siril-1.4.0、GraXpert-3.1.0rc2 を使った、天体画像処理の流れがあります。

恒星画像と星雲画像を用意します。それぞれに処理を行い、恒星と星雲部分に分離します。
後に、それらを再合成します。

GraXpert を用意します

Siril は、Pythonスクリプトを使い GraXpert機能を使えます。

Siril → スクリプトを入手 → GraXpert-AI.py
Siril → スクリプト → Python Script → GraXpert-AI.py

SirilでPythonスクリプトを使うには、次の投稿に案内があります。

次の画像は、Siril と StarNet 、GraXpert を使っています。

Name: NGC6946
Date: 2024-11-03
Optics: Takahashi TS-160, HEUIB-II
Camera: ASI294MC Pro, gain 120, offset 5, -15degrees, EAF
Exposure: 180s x 43 (total 2h09m)
Mount: 160jp, Althiba3, off-axis guide, INDI Library
Processing: Siril 1.4.0 beta2, GraXpert 3.1.0rc2, StarNet, Galaxy Annotator v0.9.4

NGC6946
ケフェウス座に位置する銀河です。
NGC6946の周りには、星間分子雲が多くあり、とても「もくもく」しています。

この「もくもく」を強調した処理をしました。
星雲画像にノイズが多く見られたので、ウェーブレット処理は軽めにしています。

Sirilで天体画像処理をするには、撮影した天体画像、フラット、ダーク、バイアス各画像をそれぞれのディレクトリに置き、各種スクリプトを選び行います。
その後に、恒星部分と星雲部分の画像を用意し、この二つの画像に、処理を施し、再合成します。

以下の様に処理していきます。

  • OSC_Preprocessing_BayerDrizzle スクリプト → 勾配補正 → 色補正 → グリーンノイズを除く
  • 恒星部分と星雲部分を分離 → StarNet
  • 恒星画像と星雲画像を、別々に処理していきます。
    • 恒星画像 → Desaurate Stars:Siril → deconvolution:GraXpert → カラー反転,SCNR,カラー反転:Siril → StarNet Star Removal → starless画像を使います。
    • 星雲画像 → Deconvolution Object-only:GraXpert → StarNet Star Removal → starmask画像を以下に処理します → 定常ウェーブレット変換 → Denoising : GraXpert → ストレッチ (HT, GHS, BP) → 彩度 → 各種処理を施した、starmask画像を使います。
  • 再合成 Siril:Star Processing → Star Recomposition 上記のstarless画像 と starmask画像 とを合成します。

天体画像処理を始めます

前処理 : OSC_Bayerdrizzle, 勾配補正(BE), 色補正(SPCC) : Siril

  • OSC_Preprocessing_BayerDrizzle.ssf (OSC: One-Shot-Colorカメラ, Mono: Monoカメラ)
  • BE : Siril もしくは GraXpert どちらかで行います。
  • SPCC: Spectrophotometric Color Calibration 分光測色法による色校正

恒星画像と星雲画像それぞれに、ディレクトリを用意し、
別名で保存すると、処理内容を切り分けられると思います。
Sirilの作業ディレクトリを使い分けます。


恒星部分を画像処理

恒星画像の為に、Desaurate Stars : Siril

飽和した星は、最も明るいピクセルにそれ以上の情報がなく、最大値にクリップされた星のことです。
”Desaurate Stars”は、ファインドスター中に行われた調整結果を考慮して星のプロファイルを再構築します。

It is important to run this tool on linear images, otherwise the stars will not have a Gaussian/Moffat profile and the calculations will be invalid.
https://siril.readthedocs.io/en/latest/processing/stars/unclipped.html

”このツールを線形画像で実行することが重要です。そうしないと、星はガウス/モファット プロファイルを持たないため、計算が無効になります。”

  • SirilのDynamic PSFを使います。[Profile type]は「Moffatモデルは星などの天体のフィッティングに適しています。」なので、私は”Moffat”を使います。
  • スターファインダーボタン(ファインドスター)を押して恒星の検出を行います。
  • Star Processing → Desaturate Stars
  • コンソールに “Remapping output to floating point range 0.0 to 1.0” と表示されます。
  • 再構築の結果を見るには、もう一度スターファインダーボタン(ファインドスター)を押します。紫色に囲まれた恒星が無くなります。
  • 星雲画像とは別のディレクトに、分かりやすいファイル名で保存します。

恒星画像の為に、逆畳み込み : Deconvolution, Stars-only : GraXpert

  • FWHWを求めるために、SirilのDynamic PSFを使います。
  • スターファインダーボタン(ファインドスター)を押して恒星の検出を行います。
  • コンソールに “Found 7160 Moffat profile stars in image, channel #1 (FWHM 3.914131)”などと表示されます
  • この”FWHW”の数値を GraXpert → deconvolution → image FWHM (in pixels)に入れます。この場合は、[3.9]を入れます。
  • Deconvolution Strength を適宜に決めます。
  • 分かりやすいファイル名で保存します。

グリーンノイズを除く : SCNR : Siril

SCNR, Maximum Mask Protection式
m = max(R,B)
G' = G * (1-a)(1-m)+m*G
R(赤色)、B(青色)どちらか値が大きい方をmとします。
a=0.5 を使って透明度を調整し緑色の値を変換します。

Pink Star校正 (行わないことあります): カラー反転、グリーンノイズを除く、カラー反転 :Siril

ワンショットカラーカメラ撮影で、悩ましい”Pink Star”
桃色と緑色は、補色関係にあるので、「グリーンノイズを除く」を用いて”Pink Star”を校正します。

A common use of the negative transformation tool is to remove the magenta cast from SHO images. In this case one need to apply Negative transformation, then Remove Green Noise, then Negative transformation again.
https://siril.readthedocs.io/en/latest/processing/colors.html

SHO画像ではなくても、マゼンタ色、Pink Starを校正できるでしょうか。

This tool is designed to be used on non-linear images, as it operates in a non-linear color space. Make sure the histogram has been stretched before using this tool to avoid incorrect processing results.
https://siril.readthedocs.io/en/latest/processing/colors.html

  • starmask_[ファイル名].fits
  • カラー反転
  • 反転画像に、[グリーンノイズを除く] (SCNR)
  • 再度、反転して反転前の画像にします。

恒星画像を分離 : StarNet Star Removal : Siril

StarNetは、Nikita Misiuraさんが開発したソフトウェアです。
StarNetを使う目的は、画像からすべての恒星を除去し、恒星画像とそれ以外の部分で異なる処理を行うことです。

  • Generate star mask が選ばれていることを確認します。恒星画像が作られます。

“starmask_[ファイル名].fits” が出来ています。後にこのファイルを合成に使います。


星雲部分を画像処理

星雲画像の為に、逆畳み込み : Deconvolution, Object-only : GraXpert

前処理を行った画像に、星雲画像のために、逆畳み込みを行います。
ディレクトリを分けて、別名で保存します。

  • FWHWを求めるために、SirilのDynamic PSFを使います。
  • スターファインダーボタン(ファインドスター)を押して恒星の検出を行います。
  • コンソールに “Found 7160 Moffat profile stars in image, channel #1 (FWHM 3.914131)”などと表示されます
  • この”FWHW”の数値を GraXpert → deconvolution → image FWHM (in pixels)に入れます。この場合は、[3.9]を入れます
  • Deconvolution Strengthを適宜に決めます。恒星画像とは違う数値も試してみましょう。
  • 分かりやすいファイル名で保存します。

星雲画像を分離 : StarNet Star Removal : Siril

星雲部分に以降の処理を行うので、Deconvolution, Object-onlyを終えた画像を分けます。

定常ウェーブレット変換 : Siril

Denoising : GraXpert

星雲画像にノイズ除去処理を行います。

  • Denoise Strength

星雲画像をストレッチ : GHS, BP : Siril

始めは、
バックグラウンドかヒストグラムの”0″に近いところ、若しくは、ヒストグラムのピークを、Symmetry point(SP)にするのも良いです。

GHS 各種モードについては、次の投稿を参照して下さい。

星雲画像の彩度 : Siril


2つの画像を組み合わせます: 再合成: Star Recomposition : Siril

Star Processing → Star Recomposition

  • 星雲画像 Desaurate Starsを施した starmask画像
    GHSを用いる
  • 恒星画像 Deconvolution, Object-only、定常ウェーブレット変換、 Denoising、ストレッチ、彩度 等を施した starless画像
    • GHSを用いる 星が飽和したり、”Pink Star”にならないように調整します。
      • Colour stretch model :
      • Clip mode : Rescale, RGB blend などに切り替える
        • Rescale: “1”を超えたピクセルのみ割り算を行う → 輝星などはそれだけ暗くなる。
        • RGB blend: “1”を超える場合には、RGBモードで変換した値とブレンドする.
          → 輝星は、白っぽくなる。
      • [Strech Factor] を動かす。
        [Local intensity] の値を動かし、明るい星が、鋭く好みの状態になるように調整する。

CLAHE

Contrast-Limited Adaptive Histogram Equalization
コントラスト限定適応ヒストグラム等化

ヒストグラムの凹凸を無くして、幅広く均等化する。ヒストグラムを平坦化する。

Fitsフォーマットや各種画像処理フォーマットで保存

調整が終わったならば、fitsファイルを保存します。また、画像フォーマットで保存します。

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