上空 800Km からの受信

これは、気象衛星画像と気象衛星受信の案内です。

多くの好奇心と少しの準備があれば、気象衛星の受信が出来ます。
気象衛星の画像からは、多くのことが分かります。

globe3.ddns.netが受信した画像は、今 日の気象衛星画像 今月の気象衛星画像 をご覧下さい。


NOAA気象衛星から急ぎ受信をされたい方は、quick-guide-wxapt-index-j.html を御覧下さい。

2005年 6月13日, 9月14日、2006年 1月12日, 6月8日、2007年 9月20日、2011年9月、2021年6月 追記

[気象衛星受信をすること]

気象衛星からの信号を受信して、その画像を得ることは、それ自体が研究になると思います。

アンテナの設計
受信機の設計
ソフトの設計
画像表示の設計

どの分野をとっても大学や高等学校の応用単元として年間を通して学習すれば、だいぶ学習力が身につくと思います。
また、趣味としては知的好奇心をくすぐる分野だと思います。


[気象衛星のこと]

気象衛星は、貴方がテレビや新聞などで見ている画像を送っている、良く知られている「ひまわり」があります。
「ひまわり」は赤道上空の 36,000kmにあります。

この「ひまわり」とは別の気象衛星があります。


ここに紹介している気象衛星は、地球の回り高度800km付近を飛んでいます。地上に近いので、雲などが詳しく見られます。

この衛星は "NOAA"が運用しています。"NOAA"は「ノア」と呼びます。


"NOAA"は、米国海洋大気庁 (National Oceanic and Atmospheric Administration)です。水と大気に関する数多くの事を手がけています。http://www.noaa.gov/

この "NOAA"が手がける気象衛星に "POES"があります。
"POES"は、Polar Orbiting Environmental Satellitesの略称です。日本語ならば「極軌道環境衛星」です。

極軌道は、北極上空と南極上空を通過します。その間に地球が自転するので、各地を観測できます。


ここでは、 米国海洋大気庁(NOAA)が手がける、低軌道にある気象衛星を 受信します。


NOAA, POESの外観は、http://www.oso.noaa.gov/poesstatus/ にあります。

http://www.nesdis.noaa.gov/satellites.html このリンク先にあるPolar Operational Environmental Satellite (POES:極軌道環境衛星)です。


米国海洋大気庁(NOAA)の上空800km付近にある衛星を、ここでは"NOAA極軌道環境衛星"と呼んでいます。

それぞれの号数を呼ぶ時は、例えば12号の場合は、"NOAA-12" と表記しています。


さて、各国が打ち上げたいろいろな衛星は、流れ星や飛行機とは見え方が違います。
朝方や夕方に、飛行機が飛ぶ早さよりも早く見えます。また、雲を引かずに明滅しないで飛んでいます。明るさは少し暗い星と同じくらいです。

ですが、NOAAが運用する気象衛星は、肉眼で見られるほど明るく光ることはありません。

極軌道環境衛星は一日に、ほぼ同じ時間帯に二回、飛んできます。私たちの見上げる視界にある時間は、10分間から15分間です。


[その他の気象衛星]

ロシアの気象衛星は "Meteor" です。2002年以降は電波を送信していません。

欧州気象衛星機関が初めて打ち上げる極軌道気象衛星は、2006年7月17日の打ち上げ予定です。
このMetOp-Aには、APTがありません。


"NOAA"が手がける気象衛星にもう一つ、"GOSE"があります。

"GOES"は、「ひまわり」と同じ赤道上空の35,800km付近にあります。「ゴーズ」と呼ばれます。
"GOES"は、Geostationary Operational Environmental Satellites の略称です。日本語ならば「静止軌道環境観測衛星」です。
「ひまわり」が使えない時にGOSE9号が、その替りをしていました。


以下に、気象衛星画像の読み方、次に受信の方法を紹介します。

何かありましたら、nakato[at_mark]globe3.ddns.netへご連絡下さい。

[上空800km からの風景] [globe3.ddns.net]


気象衛星画像の読み方

記述途中です。
[雲を読む]


増強 enhancement
MB
 
MB増強曲線と 2006年7月8日、21時53分 NOAA-17 MB画像

山口、島根、広島上空にある雲の頂点付近は、約-50度で発達しています。その下では大雨になっています。

台風3号、イーウィニャは中心から離れた南側に、頂点付近が-60度以下の発達した雲があります。
台風中心が通過した後に大雨があることが予想できます。


[海表面温度]

  単位は摂氏


[雲頂温度]

  単位は摂氏

[画像の種類]
・可視画像
反射光が強いものほど白く写るので、厚い雲ほど白く写ります。

・赤外画像
赤外画像は地表面や大気、雲から宇宙空間に向かって放たれる(放射される)特定な波長帯の赤外線を画像にしています。

温度が低いところほど明るく(輝度が強く)、温度が高いところほど暗く(輝度が弱く)なるように処理します。
高いところにある雲ほど温度が低くなるので、赤外画像では明るく(白黒画像なら白く)写ります。

・水蒸気画像
上空6km辺りの水蒸気の量、湿り具合を測定しています。湿っていいるところは白く、乾燥しているところは黒く表します。




[雲のこと]

大気中で雲が出来るためには、まず水蒸気があり、それが集まり水滴となるか(水蒸気→水滴: 凝結)、
凍る(水蒸気→氷: 氷晶)ことが必要です。


高さ別の分類 (http://www.pref.ehime.jp/noukei/gijutu/taisaku/jyouhou/jyou-yougo15-11.htm より)
高い所にある雲 (上層雲)
  巻 雲: 氷晶が集まって出来ています。巻き毛やかぎ状の形状をしています。
  巻積雲: 氷晶で出来ていて、非常に小さな丸い固まりが規則的に集まっています。
  巻層雲: 氷晶で出来ていて、薄いベール状をしています。暈(かさ)が出来ることがあります。

対流圏上部(10kmの上空)にあるため非常に冷たく、赤外画像では白く写ります。
しかし、薄い上層雲では下層の温度も合わせて観測するため明るさが落ちます。
可視画像では、低気圧に伴う厚い雲域は白く見えますが、それ以外のところでは、
薄い上層雲の隙間を通して下の雲や陸地が見えることもあるので、区別できる場合もあります。


真ん中くらいにある雲 (中層雲)
  高積雲: 白や灰色をしていて、秋にはきれいなうろこ状の雲が出来ることもあります。
  高層雲: 灰色で空一面を一様な層をなして覆い、太陽がぼんやり見えることがあります。
  乱層雲: 暗灰色の雲で、太陽や月を完全に隠し、雨が降るときの雲です。

低気圧といっしょに現れることが多いので厚い雲域となる場合が多く、可視画像では真白 に写ります。
中層雲は上層雲に比べてやや低い高さにあるります。
温度は上層雲よりも高くなり、赤外画像では淡白色や薄白色に写ります。


低い所にある雲 (下層雲)
  層積雲: 比較的大きな丸みを帯びた雲で、塊のまま横に広がります。
  層 雲: 一様の雲底となった雲で、霧雨など降ることがあります。
  積 雲: 大気の状態が不安定のときに出る雲で、鉛直方向に発達し上部は丸くなっています。
  積乱雲: 大気の状態がかなり不安定で、大きく発達し、激しい雨や雷電を伴うことがあります。

可視画像では不規則ですが、一様で滑らかに見えることが多くなります。
雲の頂上温度は地上の気温とさほど変わらないので、赤外画像では濃灰色に写ります。
霧などは、地上気温あるいは海面水温とほとんど差がないので、区別ができないことが多くなります。

  積乱雲
発達した積乱雲では可視・赤外画像とも非常に白く写ります。
あまり発達していない積雲の場合は、
赤外画像では薄灰色に写り、可視画像では灰色または白色に写ります。


http://www.gfd-dennou.org/arch/dcsatel/html/gms.html
IR1 赤外線 10.5 - 11.5 μ
IR2 赤外線 11.5 - 12.5 μ
IR3 赤外線  6.5 -  7.0 μ  水蒸気吸収帯

IR1 と IR2 の違いは?

IR1 と IR2 の比較から雲の種類が判別できます。

積雲など光学的に厚い雲では両者の輝度差は小さく、
逆に絹雲など光学的に薄い雲では両者の輝度差は大きいことが知られています。


「低気圧」
上空に強い寒気があると、24時間でおよそ15hPaは発達します。
発達は一定なので、6時間の経過で3hPaの発達をする低気圧は注意が必要です。

低気圧中心に湿った南風が入ると、さらに発達します。
早春から晩春、晩秋から初冬は、南風が入りやすい条件になることがあります。
この時は、24時間で26hPaの発達例があります。(昭和62年3月22〜25日)


「台風」
台風の発達過程は、1964年に、
ニューヨーク大学の大山さん、マサチューセッツ工科大学のチャーニーさん、オスロ大学のエリアッヤンさんが解明しました。

台風の中心に「目」が見られるのは、中心気圧が985hPaくらいからです。
海面水温が、約27度以上の海域で発生します。
3000m から 9000m の気流で進行方向が決まります。

中心付近の強い上昇流に伴いできる、背の高い積乱雲を "アイ・ウォール"  "眼の壁雲" と呼びます。

1) 中心に向かって風が吹き込む
2) これが上昇流になる
3) 対流圏から成層圏あたりまで上がる
4) 上昇が成層圏付近で止まり、周りに向かって吹き出す

台風のエネルギー源は、水蒸気が水滴になるときに出る"凝結の潜熱"です。
水から水蒸気になっても、温度は変化しないために水蒸気の持つ熱エネルギーは "蒸発の潜熱"と呼ばれ、水蒸気が保ち持っている。

1g の水が水蒸気になるには、540cal が必要

台風は、
水蒸気が凝結(水滴になる)するときに出る潜熱のエネルギーで、中心気圧を下げ、そのことで風のエネルギーを増加させたものと言えます。

(図入る)
上昇流の結果、台風中心には周囲よりも温度が暖かい部分ができます。
これを "暖気核" "ウォーム・コア" と呼びます。
"ウォーム・コア"は密度が小さいので、この部分は低圧部となり、低気圧ができます。
この結果、中心に向かって吹く風は強まり、上昇流がさらに強まる。

・スパイラルバンド
螺旋形の降雨帯は、停滞するものが多い。

・台風予報
台風の再現には、直径1mmから数十ミクロンの一つひとつの雲や雨粒の計算が必要になります。
その計算量は、とても莫大になるので、
この一粒ごとの計算を、空気の速度や温度、湿度に関係させた数式に近似させます。
これを "パラメタリゼーション"と呼びます。


ここまで記述途中



[光学センサとリモートセンシングについて]

地上のあらゆる物は、その個性で、太陽光線を反射し、放出(放射)する赤外線があります。
これを読んでいる貴方も、赤外線を出しています。

太陽から熱を受けている地球は、それと同じ熱の量を赤外線として宇宙空間へ逃がしています。


下図を見て下さい。
 
https://www.eorc.jaxa.jp/hatoyama/experience/rm_kiso/mecha_howto.html より(出典 宇宙航空研究開発機構:JAXA)


植物、土や水の「反射の強さ」は、光の波長によって異なります。

地表面と水面の「放射の強さ」は、温度によりその強さが異なります。

この反射と放射を、光学センサと放射計はとらえます。

植物は、 近赤外線 (0.9μm: NOAA, ch2)の反射がとても強く、 黄緑色 (0.55μm: NOAA, ch1)の光では反射が弱い性質を持っています。

水は、近赤外線の反射が弱く、 黄 緑色の光や 青色(0.5μm)の光では反 射が強い性質を持っています。

植物と水の反射特性は逆です。
土は、黄緑色の光の反射が強い性質を持っています。

もしも、近赤外線反射が強く、 黄 緑色光や 青色光の反射が弱い場所があると、そ こには植物があると推定できます。
この様に、反射と放射の違いをもとに、物の様々な様子を得るのが、リモートセンシングの基本です。


各衛星のセンサは、「反射の強さ」と「放射の強さ」を捕らえます。

https://www.eorc.jaxa.jp/hatoyama/satellite/satellite_mechanizm_j.htmlより(出 典 宇宙航空研究開発機構:JAXA)


NOAA極軌道環境衛星に搭載されている画像データ用光学センサは、AVHRRと呼ばれます。
AVHRRは、Advanced Very High Resolution Radiometerの略称で、日本語ならば「改良型高解像度放射計」です。


NOAA極軌道環境衛星、各チャンネルに共通な要素
分解能(km)
1.1
観測幅(km)
2800
画素数 (pixel/line)
2048
濃度階調
1024 10bit


NOAA極軌道環境衛星は、1km四方を見分けられ、幅2800kmを観測します。APTでは4km四方になっています。

話はそれますが、衛星から人の顔を見分けるにはハッブル望遠鏡衛星以上の性能が必要で、
衛星の大きさが18mになります。その大きさの衛星は、衛星追跡をしている民間の団体が一つを確認したそうです。


NOAA極軌道環境衛星が地球を観測する様子を例えるならば、貴方が手持ちのスキャナで写真を取り込む姿に似ています。

手持ちスキャナを動かす貴方の手はゆっくりでしょうが、NOAA極軌道環境衛星は秒速8kmです。

手持ちスキャナが使える幅は数十cmですが、NOAA極軌道環境衛星は2800kmです。
NOAA極軌道環境衛星のスキャナ部分は幅が広いのではなく、回転する鏡を使っています。

これも例えるならば、貴方が立った状態で目の前に鏡をかざして、鏡越しに足元を見て下さい。
その鏡を回転させて、貴方の右から足元そして左側を見て下さい。上側は無視して下さい。
そのまま貴方が秒速8kmで走ると、NOAA極軌道環境衛星が地球を捕らえる姿と同じ感じになります。


NOAA極軌道環境衛星の各センサは、雲や氷、海面や地表や植物を捕らえます。

AVHRR/3の仕様 (改良型高解像度放射計)
Channel
観測波長帯(μm)
おもな観測対象
1
0.58〜0.68 (可視)
昼間の雲、氷、雪
2
0.725〜1.10 (近赤外線)
昼間の雲、水、植生
3A
1.57〜1.64 (近赤外線)
雲と氷の識別、地表
3B
3.55〜3.93 (中間赤外線)
熱源、夜間の雲
4
10.3〜11.3 (熱赤外線)
海面温度、昼夜の雲
5
11.5〜12.5 (熱赤外線)
海面温度、昼夜の雲

NOAA-12とNOAA-14には、チャンネル3Aがありません。
チャンネル3Aと3Bの両方を搭載するNOAA-15とNOAA-16は、チャンネル3Aと3Bを昼間と夜間で切り替えて使用しています。


何かありましたら、 nakato[at_mark]globe3.ddns.netへご連絡下さい。

[上空800km からの風景] [globe3.ddns.net]


NOAA極軌道環境衛星の受信

NOAA極軌道環境衛星から急ぎ受信をされたい方は、 quick-guide-wxapt-index-j.html を御覧下さい。


[気象衛星が使う周波数]

NOAAなどの気象衛星からの信号は、2種類あります。

APTと呼ばれるアナログ画像信号は、137MHz帯を使用しています。
もう一つは、HRPTと呼ばれ、こちらは1700MHz帯です。HRPTはいくらか本格的な装置が必要です。

APTは、Automatic Picture Transmission の略で、「自動画像転送」と呼ばれます。
HRPTは、High Resolution Picture Transmission の略で、「高解像度画像転送」と呼ばれます。

ここでは、APTを扱い137MHzを受信し、画像を得ます。


NOAA衛星の周波数 ('10 11/28 現在)
NOAA衛星
beacon BTX1
APT
HRPT
NOAA-12 '07 10/10 廃止
136.77 MH 停波
停波
NOAA-14 '07 5/23 廃止
136.77 MHz 停波('02 /8/14) 停波
NOAA-15 137.35 MHz 137.62 MHz 1702.5 MHz
NOAA-16 137.35 MHz 停波('00 11/15より) 1698.0 MHz
NOAA-17 137.35 MHz 137.5 MHz 1698.0 MHz
NOAA-18 137.35 MHz 137.9125 MHz 1707.0 MHz
NOAA-19
137.35 MHz
137.10MHz
1698.0 MHz

NOAA12号とNOAA15号は、近くを飛んでいるために時々、どちらかが APT 送信を止めることがありました。
globe1.dip.jpの私達にAPT受信に関して色々と教えてくれた、NOAA12号、NOAA14号は共に廃船となっています。


Meteor衛星の周波数 ('05 5/20 現在)
METEOR衛星
APT 周波数
備考
METEOR 2-21 137.400MHz 停波 ('03/7/18)
METEOR 3-5 137.300MHz 停波 ('03/7/18)
METEOR 3-6 137.850MHz 停波 ('03/7/18)



[受信に用意する物]

-- 受信機について --

137MHzが受信できる受信機を用意します。

「ドングル 受信機」をキーワードに検索すると、USB端子に繋ぐ受信機や、SDR, Software Defined Radio を検索すると、ソフトウェアラジオが見つかるでしょう。

これらを使うと良いでしょう。

広域受信機やアマチュア無線機や気象衛星用受信機を用意します。
気象衛星は、アマチュア無線の領域外を送信に使うので、その領域を扱える受信機が必要です。

APTの受信帯域幅は、30kHzから50KHzが必要ですので、受信機はこの帯域幅を扱えるものが好ましいです。
ワイドFMは一般な無線機では 230KHz、ナローFMは例えば15KHzですから、気象衛星はその間です。

137MHzが扱える受信機を知合いに借りられる方は、帯域幅を気にせずに用意しましょう。


気象衛星用受信機は、もちろん自作ができます。
プリンストン大学、Daniel Marlow氏の講座がたいへん参考になります。http://wwwphy.princeton.edu/~p104/satlab/


他にもキット販売などがあります。探してみましょう。

市販受信機の改造もできます。

globe3.ddns.netでは、KENWOOD製TH-77のローパス・ハイ パスフィルタと中間周波数帯域幅を扱う部分に改造を加えて、帯域幅を広げています。
受信機改造、TH-77や帯域幅などに関してはこ ちらを 参照して下さい。



-- アンテナ --
初めての受信では、アンテナは何を使っても良いと思います。
しかし、綺麗な画像の為には、アンテナの種類や設置場所を選びましょう。

アンテナの性能が良く、しかも設置場所も良いと、綺麗な画像を得ることができます。

以下にいくつかの気象衛星APT受信アンテナを紹介します。


・ターンスタイルアンテナ
ターンスタイルアンテナ(円偏波アンテナ)は、エレメント平面から見て、回転電磁界のアンテナです。
下図のように1/4波長ダブレットを2つ組合わせて、1/2波長ダブレットとして、これを90°位相を回転させます。

(上図出典元:『JARLアマチュア無線ハンドブック』 1981年 CQ出版)
円偏波が思い浮かばない方は、「 偏 波アニメーション」の語で検索して下さい。いくつかの円偏波の摸式図が見つかるでしょう。

さて、気象衛星受信アンテナは、右回転か左回転のどちらにするのでしょうか?
画像復調ソフトWXSatのHELP文書によれば、気象衛星からのそれは皆、右旋円です。

衛星から見て右回りならば、地上の私から見れば左回りです。ならば、受信アンテナは左回転でしょうか?
この部分が判りませんでしたので、左右両旋円を試しました。

結果は、globe3.ddns.netの受信環境では、画質に大きな違いは見られませんでした


・ターンスタイル、銅線アンテナ
スタック、リフレクタ無しの円偏波アンテナです。
同軸ケーブルに銅線を1/4波長、約53cmを上図のように取りつけただけの簡単なアンテナです。

銅線 は、十字に組んだ角材上部に結び付けてあります。簡単な上に安いものですが、衛星の地上高10度以上ならば、確実に電波を捕らえています。

ただし、受信状況により画像に乱れが多いので、現在は使っていません。


角材は、銅線を置くためのものです。括り付けたタッパには「超広帯域アンプ」が入っています。

・Range Marker アンテナ
4エレメントの八木・宇田アンテナ2本を背中合わせ(リフレクタ)にし、それぞれを仰角45度にし、南北に向けます。

2本のアンテナは「Qマッチセクション」でつなぎます。これはスタックアンテナと同じ要領です。

globe3.ddns.netでは、市販されている144MHz用アンテナを未調整で受信したところ、QFHアンテナと同等の画像になりました。
特性が示すように、天頂付近に受信感度が弱い部分があります。


(出典元: 『Antennas』 第3版  2001年 John D.Kraus Ronald, J.Marhefka著 McGrawHill)



・Lindenblad アンテナ
4本のダイポールアンテナを30度の角度に傾けます。300ΩのTVフィーダーと、さらに同軸ケーブルにつなぎます。


http://www.phys.unsw.edu.au/~map/weather/notes/buildyourown/lindenblad.html より

http://www.amsat.org/amsat/articles/w6shp/lindy.htmlhttp://www.phys.unsw.edu.au/~map/weather/notes/buildyourown/lindenblad.html
製作案内があります。

「安く簡単で丈夫であり、性能が良い」とは製作者の言葉です。


・ターンスタイル、八木・宇田アンテナ
144MHz帯5エレシングルの八木アンテナ、MASPRO-144WH5を2本用意し、[ターンスタイルアンテナ]の様に接続しました。

これを、ワイパーモータを取り付けたアルミ脚立に載せ、水平方向のみを動かし衛星を追います。

144WH5の半値角度は55度なので、仰角は約25度にしています。これも簡単なものですが、極低高度の衛星信号を受信できます。



・Quadrafilar Helix Antenna (QFH, QFHA, QHA)
固定したターンスタイルアンテナでは、受信レベルが変化するフェージング(位相差:phase)が起ります。
しかし、QFHアンテナはフェージングが少なくなります。

QFHアンテナは、手作りができます。
ビル・スカイズさんとボブ・コビィさん http://www.askrlc.co.uk/http://perso.wanadoo.es/dimoni/ant_qha.htm が参考になります。

John Coppens さん http://www.jcoppens.com/index.php のサイトにある http://www.jcoppens.com/ant/qfh/calc.en.php は、
受信する周波数にあわせて、各寸法を計算できます。各ページのアンテナについての解説も優れています。


このQFHアンテナは、円筒に沿って上下に180度ひねった銅パイプを使います。試 作の様子。


・コンバイナ
アンテナを組み合わせて使うには、
「3D無線クラブ」 http://www.ddd.eek.jp/ddd/に ある、
「受信専用 10MHz〜1000MHz 対応 50Ω 4分配器の作り方」http://www.ddd.eek.jp/ddd/54-4bunnpai/index.htm を使うといいでしょう。


・超広帯域アンプ
上記のターンスタイルアンテナとQFHアンテナには、気象衛星の地上高が低くても受信感度を上げるために、
μPC1651Gを使った(有)秋月電子通商から販売さている、「超広帯域アンプ・キット」を取りつけました。これは必ず必要なものではありません。


[ソフトウェア]

・画像復調ソフト

WXtoImg (Weather to Image)という名前のソフトウェアです。サウンドカードのみで画像を得られます。http://www.wxtoimg.com/
 
globe3.ddns.netでは、WXtoImgの開発や日本語文書に関わっています。
 
何かありましたら、nakato[at_mark]globe3.ddns.netへお気軽にお知らせ下さい。

WXtoImgの日本語訳と解説は、こちらです。


・追跡ソフト

何時にどの方向に、どんな人工衛星が現れるかを知るには「トラッキングソフト」と呼ばれる、人工衛星の位置や軌道を表示するソフトを使います。

「predict」
http://www.qsl.net/kd2bd/predict.html


NASAの「トラッキングサイト」は、NASAからのデータに基づくJavaアプレットです。ブラウザを使って見ます。



http://science.nasa.gov/realtime/Jpass/25/JPass.asp より


http://science.nasa.gov/realtime/ には各種あります。

世界地図上での衛星位置
http://science.nasa.gov/realtime/jtrack/Spacecraft.html

宇宙から見た地球の三次元画像と衛星の位置
http://science.nasa.gov/realtime/jtrack/3d/JTrack3D.html

NOAA極軌道環境衛星の位置
http://science.nasa.gov/temp/NOAA15Loc.html
URL中(NOAA12Loc.html)の数字を12,14,15のいずれかにします。

貴方がWXtoImgを使うならば、衛星の軌道要素から、各気象衛星が現れる時間をWXtoImgが計算するので、
ここに紹介する衛星追跡ソフトは、必ず必要ではありません。

また、CX6DD, DL7AOT, EASYCOMM I, GS-232A, LVB Tracker, RC2800, SAEBRTrack,SatDrive, Satellite Tracker Jr. 各ローテータの制御が出来ます。


・画像表示

*NIXやGUN/Linuxには、XVがあります。「color editor」の「HistEq」や「Intensity」の各パラメータを調整して使います。

・画像編集

GIMPが便利だと思います。http://www.gimp.org/


・録音ソフト

WXtoImgやWXsatを使用すると必要はありません。

Sound Studio for Linux. http://studio.sourceforge.net
無線機からの入力レベルを調べたかったので使いました。

studioの rpmファイルは、redhatから頂いてきました。ftp://ftp.redhat.com/pub/redhat/linux/6.2/en/powertools/i386/i386/SoundStudio-1.0.2-3

次のコマンドで起動させます。
studio

「/usr/lib/SoundStudio/Linux に"sox"が無い」と、エラーが出たので次のようにリンクを張りました。
ln -s /usr/bin/sox sox




[NOAA極軌道環境衛星の軌道]

NOAA衛星の軌道は、太陽同期衛星と呼ばれ、毎日ほぼ同じ時間帯に飛来します。
この太陽同期軌道は、500〜1000kmの地球に近い高度を南北に周回する軌道です。

太陽同期軌道は、衛星が南北に進む間に地球が東に自転するので、地球のほぼ全域の観測ができます。
また、太陽同期軌道は地球の近くを廻るために、地表の様子を詳しく観測することができます。

太陽同期軌道は衛星の軌道面が、太陽に対して常に同じ角度を保ちます。
ですから、衛星の真下にある地表は、太陽光線が入る角度が常に同じになり、観測をする地表の太陽光線の影響が同じになります。

この太陽同期軌道は、地球の赤道がわずかに膨らんだ形の影響で、重力のゆがみがある為に、赤道に対して90度の角度ではなく、斜めになっています。

NOAA極軌道環境衛星の軌道データ ('10 --/--)

NOAA12
NOAA14
NOAA15
NOAA17
NOAA18
NOAA19
平均高度
804km
845km
807km
810km
854km
km
軌道傾斜角
98.6
99.1
98.6
98.7
98.74
--.--
公転周期
101.1
101.9
101.2
101.2
102.12
---.--




[WXtoImgを使う実際の受信] (quick-guide-wxapt-index-j.htmlも ご覧下さい)
・ケーブルをつなげます。
アンテナと無線機を同軸ケーブルで繋げます。無線機の外部出力とサウンドカードもケーブルで繋げます。
無線機のスケルチは下げておきます。無線機とPCのミキサーにある音量を中間くらいにしましょう。

・緯度と経度を指定します。
WXtoImg画面の[Options]にある[Ground Station Location]を選び、受信をする場所の都市名と、
日本ならば国名に「japan」を項目に入れて下さい。次に[Lookup Lat/Lonbutton]ボタンを押すと緯度、経度が表示されます。

・軌道要素を取り込みます。
コンピュータをインターネットにつなぎ、"Options"メニュー の"Internet Options..."を押しましょう。
GUN/Linux版で、2ヶ所から選べる場合は、"Get Keplers from Celestrak"に印をつけます。
最新の軌道要素を取り入れたい時や、MS-Windows版などでは、www.space-track.orgに登録が必要になるでしょう。
"File"メニューの"Update keplers"を押します。最新の軌道要素が取り込まれます。

・受信します。
[File]にある[Record...]ボタンを押します。続けて[Record]を押します。

・周波数と音量
WXtoImg画面の下に通過する気象衛星名、高度、送信周波数、通過時刻が表示されます。
受信機の周波数を、表示された周波数に合わせます。

衛星が飛んで来るまで、お茶や紅茶、珈琲を飲んで待ちましょう。

衛星の通過時刻には、受信をしている音量が表示されるでしょう。その色が緑色になるように音量の調整をして下さい。
表示される音量は、50.0 から 75.0の間にします。初めての受信では音量を控え目にしましょう。

・画像が見られましたか?
衛星信号の受信は、10分から15分間続きます。
衛星通過後に受信信号が解析されて、画像が表示されるでしょう。

画像が極端に斜めになっていますか?
斜めになっている場合は、WXtoImg画面の[Help]にある[Frequently Asked Questions...]中の
[斜めな画像]にある「斜めの画像に垂直側の端がありません。」の案 内を見ながら修正をして下さい。


[受信機について]

帯域幅が、40kHzから50KHzを扱える受信機が望ましいです。これよりも狭い帯域幅でも、受信と画像復調はできるでしょう。

globe3.ddns.netの受信機は、帯域が12KHzのナローFMなので、そのまま受信し階調スケール(グレースケール)を見ると、
高域及び低 域がありませんでした。そのために、帯域幅を変更する改造をしてます。 こ ちらを参照して下さい。

http://wwwphy.princeton.edu/~p104/satlab/を 参考にして、気象衛星用受信機を作ることもできるでしょう。




[音量調整について]

音量の調整が、鮮明な画像を得る要点の一つです。

ソフトウェアの解析は、AMで行なっているので、音量が大きいと明るく(白く)、小さいと暗く(黒く)なります。
音量の調節を巧く行い、暗すぎたり、白く飛んでいない画像にします。

WXtoImgは受信中及び復調が終わり、画像が表示されると、右下に音量を表示します。

WXtoImg[2.3.12]以前ならば、gain数値を4から16にします。
WXtoImg[2.3.13]以降は、音量を50から75の間に調整します。

数値が小さいならば受信機の音量を上げ、数値が大きいならば音量を下げます。

始めての受信は、音量を下げ気味にすると良いでしょう。


[雑音]

受信音にテレビやラジオ、航空業務無線が混信することがあります。
まずは簡単に、アンテナや受信機の置場所を替えてみましょう。混信が無くなる場合があります。

受信機とコンピュータにつながる全てのケーブルにト ロイダルコアフェ ライトコアを巻くことも良いでしょう。

受信機改造の場合は、短い配線が他の無線やラジオの 周波数を拾うアンテナの役割りをすることがあります。

電源には、市販されるノイズフィルターを入れることも考えられます。
電源、受信機、コンピュータを同じ電位でアースを行うなど、電源部分の調整は基本です。


globe3.ddns.netが受信した画像は、
 今 月の気象衛星画像今日の気象衛星画像 をご覧下さい。



何かありましたら、nakato[at_mark]globe3.ddns.netへご連絡下さい。


[上空800km からの風景] [globe3.ddns.net]

[APTの構成 について]

アメリカ海洋大気庁(National Oceanic and Atmospheric Administration)に解説があります。
以下は、http://www2.ncdc.noaa.gov/docs/klm/html/c4/sec4-2.htmを 元にしています。

自動画像送信(APT)は、AVHRR/3から AVHRRチャンネルのうちの2つを処理し、再編されたデータを送信します。

可視光チャンネル(ch1, ch2)は日中に使われています。赤外線チャンネルは絶えず(昼夜)使われます。
他の赤外線チャンネルは軌道の夜間部分中に、可視光チャンネルと切り替えて使われます。

APT信号は連続に送信され、衛星の電波が届く範囲ならば、低価格の設備で比較的簡単に受信できます。

処理されたAVHRRデータ振幅変調は、2400Hzのサブキャリアを調整します。
最大のサブキャリア調整は、87%±5%(92%を超過せず に)の調整を行い、グレイスケールエッジ番号8(図4.2.2-1を参照)の振幅として定義されます。

振幅変調(AM)調整された副搬送波が、続いて周波数変調(FM)に使われる137-138MHz帯の送信機を調整します。

下表4.2.2-1は APT送信特性の要約です。

図4.2.2-1





[気象衛星]

http://www.eumetsat.int より

欧州気象衛星機関 EUMETSAT (European Organization for the Exploitation of Meteorological Satellites)

EUMETSATが初めての極軌道衛星を、2006年7月17日、日本時間7時29分(世界標準時:16時29分)にカザフスタンのバイコヌール基地から打 ち上げました。

http://www.eumetsat.int/idcplg?IdcService=SS_GET_PAGE&nodeId=47&l=en にpdfによる案内があります。
MetOP-2は打ち上げ後には、MetOp-Aと呼ばれます。

EUMETSAT User Services にいらっしゃる デビー リチャード さんからのお知らせでは、
アナログ伝送のAPTは無いとのことです。

[最近の NOAA極軌道環境衛星 APT送信]
http://noaasis.noaa.gov/NOAASIS/ml/specialbull.html
http://www.oso.noaa.gov/poesstatus/
http://www.osdpd.noaa.gov/PSB/PPP/notices/notices.html
より


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